星の砂

                          １４
                    　　前哨1

　敵潜水艦の目的は、チェンリーが撃墜した飛行機のパイロットの救出とふんだザーズ
は、部下を墜落地点に向かわせた。やがて、潜水艦から発進した兵隊を乗せたゴムボー
トが墜落地点に近い海岸に向かっていった。
　だが、潜水艦を監視していた兵士が、思わぬ事態に大声を上げた。
「大佐、潜水艦が。」
「どうした、何かあったのか。」
「沈みます。潜水艦が火を吹きました。」
　ザーズは、天井の窓に梯子をかけ登り外にでてみた。そこで見たものは、潜水艦が炎
を上げて沈んでいく姿だった。そして、沈んだ潜水艦の向こうに姿を現わしたのは、見
たこともない船とも航空機ともつかない物だった。
　ザーズを追って外に出ていたチェンリーにも、その物体の正体がわからなかった。メ
トリーが、チェンリーとザーズが見ている方向を見て言った。
「なにあれ、ヌクレルの兵器なの。」
「いや、知らない。見たことがない。」
　そして、その物体は海中に没したかと思った瞬間、水柱を上げて空中に飛びだし空に
消えていった。

　　　　　　　　　　　　　　　前哨2

 チェンリーが作動させた脱出装置から出た信号は、救助に向かうシャンドウの戦闘機と
ブーメが受信していた。
「こちらシャンドウ、ブーメ応答せよ。」
「副長のラリイです。今、船長の信号を受信しました。」
「私も受信したわ、この信号に向かって飛んで行きます。」
「了解、こちらもシャトルの準備をします。」
　そのとき、シャンドウの戦闘機のコンピュータが警告を発した。
-未確認飛行物体接近-
「シャンドウさん、こちらのレーダーも補足しました。後方、三十キロ。航空機のよう
です。なにか、発射した。逃げて、シャンドウ。」
-誘導弾接近　自動回避-
「ラリイ、これはどこから来たの。」
「わかりません、水中発射かもしれない。」
-回避完了　誘導弾失速-
「シャンドウさん、戦闘機のようですね。ぴったりついています。」
「それは、こちらのレーダーでもわかるわ。」
-誘導弾接近　自動回避-
-回避不能　接触まであと二十秒-
「シャンドウ、急上昇だ。早く。」
　シャンドウは、ラリイの言うとおり機を上昇させたが、さらにミサイルの追尾がつづ
く。上昇をつづけるシャンドウの機は、惑星の丸みが分かるほどの高度に達したが、ま
だミサイルを振りきることができなかった。
-接触まであと五秒-
-誘導弾失速-

　　　　　　　　　　　　　　　前哨3

　シャンドウを撃墜しようとした者は、ミサイルが失速したあとに海中に姿を消した。
ラリイの進言でシャンドウは、ヌクレルに帰還することになった。
　ブーメの記録では、シャンドウに向かって発射された最初のミサイルはレーダー追尾
だったが、二弾目は熱線追尾だとわかった。さらにミサイルを発射した物体の速度は、
この惑星の文明程度では考えられないものだった。
　未知の敵、これはヌクレルだけでなく地球人類にとって脅威になることを予感したラ
リイは、この事態を直ちに太陽系開発委員会に敵のデータと共に送信した。
　だが、そのデータを受信したのは、太陽系開発委員会ではなく、星の窓を通過したば
かりのバーミリオンだった。
　バーミリオンのブリッジでは、艦長と部下数名がデータを見ていた。
「これが、敵か。」
「こいつは、偵察にきたのでしょう。撃墜しようと思えばできたんだ。」
「おそらく、トライラルの技術に対するテストだな。」
「こんなものじゃないでしょう。敵の本隊は。」
「幸い、やつらも船自体の超光速能力はないようだな。」
「十分、闘えるということでしょうか。」
「いや、わからない。それを探るのがブーメの任務だ。」